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二人の彼に囚われて【目覚め】~偽りの花嫁は真実の恋を知る~
第6章 【めざめ~偽りの花嫁は真実の恋を知る~】(後編)
振り絞るような声。ミナも消え入るような声で応えた。
「この気持ちをお伝えしたからには、私はもう王宮にはいられません」
「どうして?」
静かな問いかけに、ミナの眼から大粒の涙があふれ出し、すべらかな頬を伝わった。
「だって、殿下のお心の中に私の居場所はないから。殿下は今もずっと初恋の方を大切に思われているのでしょう。後にも先にも、生涯を共に歩みたいと考えた、ただ一人の女性だとおしゃっていました」
王がすかさず言った。
「あれは嘘だ」
王はこの場にふさわしい言葉を探しているようだった。ひと言ひと言、ゆっくりと紡いでゆく。
「確かに私はそなたに言った。ミナが初恋の女人について訊ねた夜のことだ。あの夜のやりとりはよく憶えている」
ー殿下のお心には今もその方がお住まいなのですね。
ーああ。
王はあの夜の会話を繰り返した。
「さりながら、あれは心にもない台詞だった」
「何故なのですか? どうして、そんなことを」
「決まっている」
王が自嘲気味に言った。
「そなたの心には別の男が住んでいる。そなたがテギルを恋い慕っていると知りながら、どうして私が本心を口に出せるものか。あの時、初恋の娘を既に忘れたと正直に告白したら、私は続けて自分の本心を、そなたへの恋情を臆面もなくぶちまけてしまっていただろう。だからこそ、あの夜、私は偽りを口にしなければならなかった」
ミナは青ざめた唇をかすかに震わせた。
「では、ここのところ私を遠ざけておいでだったのは」
「そなたへの想いを最早抑えておくのが難しくなったからだ」
「この気持ちをお伝えしたからには、私はもう王宮にはいられません」
「どうして?」
静かな問いかけに、ミナの眼から大粒の涙があふれ出し、すべらかな頬を伝わった。
「だって、殿下のお心の中に私の居場所はないから。殿下は今もずっと初恋の方を大切に思われているのでしょう。後にも先にも、生涯を共に歩みたいと考えた、ただ一人の女性だとおしゃっていました」
王がすかさず言った。
「あれは嘘だ」
王はこの場にふさわしい言葉を探しているようだった。ひと言ひと言、ゆっくりと紡いでゆく。
「確かに私はそなたに言った。ミナが初恋の女人について訊ねた夜のことだ。あの夜のやりとりはよく憶えている」
ー殿下のお心には今もその方がお住まいなのですね。
ーああ。
王はあの夜の会話を繰り返した。
「さりながら、あれは心にもない台詞だった」
「何故なのですか? どうして、そんなことを」
「決まっている」
王が自嘲気味に言った。
「そなたの心には別の男が住んでいる。そなたがテギルを恋い慕っていると知りながら、どうして私が本心を口に出せるものか。あの時、初恋の娘を既に忘れたと正直に告白したら、私は続けて自分の本心を、そなたへの恋情を臆面もなくぶちまけてしまっていただろう。だからこそ、あの夜、私は偽りを口にしなければならなかった」
ミナは青ざめた唇をかすかに震わせた。
「では、ここのところ私を遠ざけておいでだったのは」
「そなたへの想いを最早抑えておくのが難しくなったからだ」