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第30章 【第三十話】仕組まれた事故

　ルードヴィグは人がいないところで移動魔法を使い、魔王城へと戻った。
　部屋に戻っても手を離そうとしないセラフィーナが心配になったが、ルードヴィグがキスをしたことでようやく落ち着きを取り戻したようだ。

「あれは」
「事故だ」

　どう見てもルードヴィグが仕組んだとしか思えない出来事であったが、端から見れば事故にしか見えなかった。

「まぁ、仕組まれた事故だったわけだが」
「ルードヴィグ」
「なんだ」
「私も事故に見せかけて殺される？」
「まさか！　そんなことはしない」

　やはり実の両親が死ぬ場面を目の当たりにして、ショックを受けているのかもしれない。これは見せない方がよかったかと思い始めた頃、セラフィーナは口を開いた。

「あの二人、ぐちゃぐちゃ？」
「まぁ……バルコニーの破片で潰されたからな」
「片付ける人が大変」
「そうだな」
「もっと他の方法があったはず」

　さすがにこの方法は悪手だったかと思っていると、セラフィーナは首を振った。

「どうせなら獣に食い殺されればよかったのよ」
「セラフィーナ？」
「しかもあんな一瞬で死ねるなんて、駄目よ」

　セラフィーナの呟きは、ルードヴィグの予想を外れていた。

「意識が遠のいたら首を緩められ、意識が戻ったら首を絞められ、助かったと思った次には何度も死を見せられ、絶望させられて……」

　妃はセラフィーナに予想よりも酷いことをしていたようだ。

「楽に死なせてしまったか」
「ん」

　だけど、この方法以外となると、なかなか難しかったのも事実。

「次の国王は兄がなるの？」
「まだ混乱している状況のようだが、そうなるはずだ」
「まさかとは思うけど、私、探されないよね？」
「亡くなった国王の遺言がどうなっているのかまではさすがに分からなかったが、可能性はあるな」
「や！　ルードと離れたくない！」

　王宮は今、現国王と妃が同時に事故で亡くなったのだ。大混乱しているだろう。
　しかも、めでたいはずの建国祭で起こってしまった事故。

「とにかく、今日はもう休もう」
「……ん」