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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第36章 三*結婚、しないよな?
 アーベルはここ数日、モヤモヤしていた。
 アリシアにはあんなことを言ったが、本気でそうさせたいと思ったわけではなかった。
 だからアリシアを避けていたし、アリシアさえ目にしなければ問題なかった。
 ──と思ったのは、女性に誘われて、ベッドで奉仕を受けるところまでだった。
 今まで、何度か身体を合わせたことのある相手だったし、気持ちが良いと思っていた。
 だけど、どうしてだろう。
 今日は気持ち良いと思えなかったのだ。

「アーベルさま、気もそぞろって感じですけど」
「そうでもない」
「しかも、元気もないようですね。お疲れですか?」

 女性は、アーベルのモノをつかんで困惑しているようだった。
 いつもなら、ゆるゆると擦るだけで元気になるのに、今日はくったりとしたままだった。

「──今日はもういい」
「はい」

 アーベルはため息を吐き、女性を帰した。

 今まで、こんなことはなかった。
 それなのに、アリシアと身体を合わせてからこちら、なんだかおかしい。
 アリシアのことを考えると、今まで萎えていたのに、痛いほど張り詰めてきた。

「…………」

 アーベルは自身を握りしめ、そろりと擦った。
 アリシアのナカを思い出すと、ますます張り詰めてくる。

「ぁぁ、アリシア」

 アーベルの口から思わずアリシアの名前が洩れた。
 握りしめ、アリシアのナカを思い出していると、気持ちよさに弾けた。

「はぁ……」

 出してすっきりしたところで、アーベルは自己嫌悪に陥った。
 アリシアに酷いことをして、さらにそれが気持ち良くて、以降、アリシアでないと勃起たないとか、どうなっているのか。

「……今さら、蜜月をしようなんて言い出せないし」

 いや、そもそも蜜月とは、結婚を前提にお付き合いしようといったものであり、身体の相性を確かめるもので……。
 もう確かめようもないほど、アリシアでないと勃起しない。
 だけど、結婚を前提にだなんてそんなことは言い出せない。

 そう思っていたのに。

 そのアリシアが、見知らぬ男に言い寄られていた。
 カッと頭に血が上り、割って入っていた。
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