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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第39章 【番外編:三】ヴィクトルは愉快な日々を送りたい
 ケヴィンは国王の妹であるディーサと王家の傍系であるバートの間に産まれた第一子だった。
 そう、一部の者を除いて、ケヴィンは二人のたった一人の子だと認識されていた。

 * * * * *

 ヴィクトルは、つまらなかった。

 ヴィクトルは魔族にしてはお調子者で、楽しいことが大好きだった。
 だから自分が楽しむためにはなんでもしたし、楽しくなければ楽しくした。
 そのヴィクトルが今、つまらないと思っていた。

 ヴィクトルは今、絶賛、仕事中だった。
 それならばつまらなくても仕方がないだろうと言われるだろうが、ヴィクトルは仕事でもつまらないことを楽しくしていたし、今まで、意外なことに仕事がつまらないと思ったことはなかった。
 そんなヴィクトルがつまらないと思っている。
 これはある意味、ゆゆしき事態である。

「んー」

 本当に、つまらない。
 ヴィクトルはただ警備のために突っ立っているだけであっても、それがつまらないと思ったことがない。
 周りを見回せば行き交う人々を観察できたし、人が通らなければ、周りの風景を楽しむことだってできた。

 些細なことでもつまらなさから脱却できる鍵があったし、端から見ればどんなにつまらないことでもヴィクトルなら楽しむことが可能だった。

 そんな前向きなヴィクトルにしても、見張っている男はつまらなかった。

 男の名前はケヴィン。
 人間の王国であるラートウトルの第三位の王位継承権を持つ男だ。

 ヴィクトルは今、魔王の側近であるアーベルから命じられて、人間のふりをして王宮に潜り込んでケヴィンの様子を見ている。観察とも言う。

 もちろん、最初は初めてだらけで楽しかった。
 とはいえ、ケヴィンという男は、あまり褒められた生活態度ではなかった。
 それでもヴィクトルは楽しかった。
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