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第1章 本編　【第一話】セラフィーナと魔王さまの出逢い

　ここは、ラートウトル王国の外れにあるムスタの森の中。
　そこには、この国の王の妹の娘であるセラフィーナが、数人の従者とともにひっそりと暮らしていた。

　セラフィーナの朝は早く、陽が昇る前に起床する。
　起きたら動きやすいワンピースに着替えて、従者もつけずに森を散歩するのが日課になっていた。
　今日も天気が良くなるようで、空気が美味しい。セラフィーナは森の中で大きく伸びをして、最近、お気に入りの池の側まで行くことにした。

　セラフィーナは慣れた足取りで森の中を歩く。
　森の動物も慣れたもので、セラフィーナの気配がしても、身を隠すことはない。

「おはよう、小鳥さん」
「ピチュチュ」

　挨拶を交わしながらセラフィーナはゆっくりと歩いていた。
　いつもなら池に近づくにつれ、動物の気配が濃厚になってくるのに、何故だろう、今日は先ほどの小鳥以外、姿が見えない。
　不思議に思いつつ、セラフィーナは池へと向かった。

　池へたどり着くと、池の縁にだれかが倒れているのが見えた。
　セラフィーナは慌ててその人の側へと走り寄った。
　真っ黒な塊からは、うっすらと血の臭いがしてきた。
　セラフィーナは目を見開いて、倒れている人を見た。
　黒くて長い髪はボサボサに乱れ、手には血に濡れた剣を持っていた。
　関わらない方がいいとセラフィーナは分かっていたが、このままここに捨てておく訳にもいけないのも分かった。
　どうするのが正解なのか分からなかったけれど、セラフィーナは声を掛けていた。

「大丈夫ですかっ？」

　セラフィーナの声に呼応するかのように、その人はピクリと身動ぎをした。

「あのっ、人を呼んで……っ。えっ？」