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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第46章 八*おまえももげてしまえっ!
 なんだか長い付き合いのような気になっていたけれど、改めて考えてみれば、顔を合わせたのはこれで二度目だ。ちなみに、初顔合わせとケヴィンのいう情を交わしたのは同日のため、ややこしいので一回とした。

「そうか? あたしは初めて会ったという気がしないんだが」
「そりゃあケヴィンから話を聞いていればね……」

 それがどんな内容なのかヴィクトルは分からないし、分かりたくない。

「ケヴィンから聞いていた以上の薄情さだ!」
「おれ、薄情か?」
「とても」

 ケヴィンからは端的に返されてしまった。
 ヴィクトルもそのあたりは自覚はあるが、そもそもヴィクトルの基準が楽しいか、楽しくないかなのだから、仕方があるまい。

「あれだけベッドの中で情熱的な口づけを交わし、熱く乱れ……」
「そこはいい、端折れ」
「いや、重要でしょう!」
「とにかくだ。おれの子なのは分かった。認知する」
「はやっ!」
「じゃあ!」
「いやいや、待て」
「なんだ? 書類に署名しないと駄目か?」
「そういう……。そうか、なるほど!」

 ケヴィンはなにか思いついたらしい。
 興奮しているらしく、ヴィクトルは魔力を感じていた。
 悔しいけど、美味しくて極上の魔力だ。これを味わえなくなるのは惜しいが、これ以上、関わると楽しいことより面倒、厄介なことばかりが増えそうで嫌だ。

「ヴィクトル、分かった。口約束だけでは心許ないから、書類を用意する。書類が出来るまで、城に滞在してくれ」
「……ここじゃないと駄目か?」
「駄目に決まっておろう! そもそも、どうやって連絡を取れば良いのだ」
「……アーベル経由で」
「またアーベルに頼むのか! どれだけ大変だったと」
「分かった。書類が出来るまでの間だぞ。待っても五日だ」
「五日……せめて七日」
「五日だ」

 ヴィクトルとケヴィンはしばらくにらんだが、ケヴィンが折れた。

「……分かった、五日で準備をさせる」

 こうしてヴィクトルは五日間、城に再び滞在することとなった。
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