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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第46章 八*おまえももげてしまえっ!
 ヴィクトルはそこでふと気がついたことがある。

「おまえ、そういった教育は受けてないって聞いたんだが」
「そうだけど?」
「いや、今、普通に話してたし! しかも情を交わすとか、なに気取った言い方してるの?」
「アルベルティーナに教えてもらったんだよ」
「…………」

 ヴィクトルが思っている以上にアルベルティーナは破天荒な性格をしていそうである。
 ヴィクトルはちょっとだけ思った。
 アルベルティーナが王族で人間でなかったらよかったのに、と。

「とにかくだ、アルベルティーナにはよろしく伝え……」

 もう二度と会うことはない。
 ここで移動魔法を使って逃げてしまえば向こうも追ってこれまい。
 ヴィクトルはそう思って別れの挨拶を口にしている途中。
 ケヴィンの部屋の扉が大きな音を立てて開いた。
 見たら駄目だとヴィクトルは思ったのに、条件反射でそちらを見てしまった。
 そこには、真っ赤な顔をして、キラリと輝く剣を握りしめたアルベルティーナがいた。

「ざけんな、ヴィクトル! おまえももげてしまえっ!」

 アルベルティーナはそういうと、剣を振り上げてきた。

「え、アルベルティーナ?」

 驚いているのはどうやらヴィクトルだけのようだ。
 ケヴィンはアルベルティーナの凶荒を知っていたようで、にやにや笑いながら見ているだけ。

「あたしというものがありながら、他の女と寝るとか、許さんっ!」

 アルベルティーナはヴィクトルに向かって剣を振り下ろしてきた。
 それは技巧もなにもない乱暴な剣先だったため、ヴィクトルは難なく避けることが出来た。
 しかし、それを見て激昂したのはアルベルティーナだ。

「避けるなっ!」
「いや、避けなきゃ死ぬだろ」
「死ねっ、この浮気者っ!」
「浮気もなにも、おれ、アルベルティーナのなんなの?」

 ヴィクトルの質問に、アルベルティーナは虚を突かれたようで、剣を止めた。

「……ん? 言われてみればそうだな。あたしとヴィクトルの関係、とは?」
「をいっ! そんなのでおれ、殺されかけたのかっ?」

 アルベルティーナの持っていた剣は危ないからと早々に片付けられ──その前に取り出さないでほしかった、とはヴィクトル談──、ケヴィンの部屋でアルベルティーナと三人で膝を交えて話し合うことになった。

「久しいな、ヴィクトル」
「二度目ぶり、ですよ」
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