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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第47章 九*騙し討ち
 * * * * *

 それからヴィクトルは、なにかを吹っ切るようにあちこちの女性に声をかけて交わった、かと思うと、何日も家に引きこもったりと浮き沈みが激しかった。

 ただ言えたのは、なにをしても楽しくなかった。

 ヴィクトルは家のベッドの上でぼんやり考える。

 どうやって楽しんでいた?
 楽しいってなんだ?
 そもそもなにが楽しかった?

 そう考えて浮かんでくるのは、必ずアルベルティーナの顔だった。
 彼女との付き合いはそれほど長くない。
 あの子どもが出来る交わりと、その後のあの問題の五日間だ。
 どちらも思い出したらヴィクトルの心は後悔にキリキリと痛むけれど、それと同時に楽しかったという思いも浮かんでくる。
 交わりはともかくとして、アルベルティーナと過ごした五日間はとりたててなにか派手な出来事があったり、印象深いことがあったわけではない。
 だけど思い出す度に、痛みと温もりを思い出すのだ。
 あの何気ない日々は、今までで一番、楽しかったかもしれない。
 だが────。
 思い出すのが辛い。
 痛みと温かさの思い出は、抜け殻になったヴィクトルには辛すぎた。
 この記憶が消えてくれれば、楽に生きられるのに。
 楽しかった思い出が、ヴィクトルを苦しめる。
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