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瀬音とボクとよしみくん
第30章 有貴くん⑥ 失恋
「え? 有貴くん?」


「だ、大丈夫か? 純」


そう、カツアゲされていたのは純だった。


不良はずっと睨んでる。
けど、純の手前、もう引き下がれない。


「お、おい、駄目だろ。か、か、返してやれよ」


「んだと?」


不良はさらにメンチを切ってきた。
あぁ、声も足も震え出してきた。


ヤバっ。
逃げたいかも。


「え、違うよ、有貴くん。勘違いだって」


「は? 違わないだろ」


どう見たって純が不良にカツアゲされているじゃないか。


それを純は否定する。


この場を穏便にすませるためか。
俺を思ってのことか。


「大丈夫だ、純。俺にまかせろ」


とは言っても、どうしよう。
不良はずっとメンチを切ったまま。


「とりあえず、この手ぇ、外せや」


「あ、すんません」


俺の手は、不良の腕を握ったまま固まっていた。


慌ててはずし、反射的に謝ってしまった。


「いや、金は返せよな」


すると、不良は拍子抜けするほど大人しく、金を純に返した。


無言で純に金を差し向ける。


よく見ると、それは五千円札だった。
五千円もカツアゲされそうだったのか。
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