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瀬音とボクとよしみくん
第41章 あの日、あの時
ボクは髪を結んでいた小さなリボンを取って見せる。


「これは、私のです。どうして? 服どころか、遺体も、なにひとつみつからなかったのに……」


今まで、たんたんと説明していた良美ちゃんなのに、語気が強まる。


「兄がこっそり私の服を着ていたのは知っていたんです。もう英語教室は終わって必要ないのに、兄が部屋でこっそり着替えていたのを見てしまったんです。私はそんな兄が嫌でした。はっきり言って軽蔑していました」


軽蔑……


今も少しだけ女装しているボクに突き刺さる。


「だからあの日は、きっと、女装して出掛けたんだと……だから……だから……女装なんかしなかったら……」


良美ちゃんの目から涙が一粒落ちる。


「そうだったんだ。ボクに会いに来てくれたんだ」


「えぇ、今ならわかります。きっと一ノ瀬さんのことが好きだったんだと思います」


「好き? 本当に?」


「告白しようとしていたんじゃないでしょうか? ヨシミとして」


「まさか」


「いえ、本当です。勝手に兄のことを言って、怒られるかもしれませんが」


「怒られる?」


「女装していたことまで言ってしまってますから、でも、もういいですよね。実は、出掛ける前日にラブレターを書いていたのを見たんですよ」


「ラブレターを」


「はい」


ふと、瀬音くんを見ると、少し怒っている。


「どうしたの?」


「いや、なんでも」


ううん、怒っているよ。


きっと、良実くんが初恋だなんていったから。
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