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乳房星(再リフォーム版)
第97章 ダンシング・オールナイト
「オンドレは、せっかく就職した市役所をほかしたみたいやのぉ…なんであななもったいないことしたんぞ!?」

けんちゃんに怒鳴られたてつろうは、つらそうな声で『せやかて…』と言うた。

けんちゃんは、てつろうに対して『はっきりものいわんかい!!』と怒鳴りつけた。

「せやかてなんじゃあ言いたいねん!!はっきりものいわんかいボケ!!」

けんちゃんに怒鳴られたてつろうは、どう答えればよいのか分からずにコンワクしていた。

けんちゃんは、てつろうにこう言うた。

「要するにあれだろ…近安優(きんあんゆう)…それがいかんけん、市役所をほかしたんやろ!?」

近安優(きんあんゆう)…

家の近くにある職場だから、親が安心する…

優しい人たちばかりいるから、大丈夫…

…と言う意味である。

『大都市の大学を卒業したあと、生まれ故郷にUターンして、生まれ故郷で就職するなんて親の一方的な満足だ!!』と言うことをてつろうはけんちゃんに言おうとしていたが、いえなんだ。

けんちゃんは、再びてつろうのメンドーをみるハメになった。

翌日(10月30日)の正午過ぎのことであった。

ところ変わって、名古屋大須の赤門通りにある味噌煮込みうどんのうまい料亭にて…

料亭の10畳の奥座敷に、政子六郎夫婦と日奈子と日奈子の両親と尾越(おこえ)の家の家族4人とゆりこと仲人さん夫婦12人が集まっていた。

テーブルの上には、懐石料理とアルコール類が並んでいる。

尾越の家は、政子の3番目の兄・元史(もとふみ)がムコ養子に行った家である。

たつろうさんのうんと遠い親せきの家でもある。

席にいる4人は、元史と妻(政子の義姉)の美代子と長男・麗彦(かずひこ・39歳・一流企業の管理職)と次男・元彦(37歳・工場従業員)である。

政子は、日奈子のハツコイの男性を尾越の本家(岐阜県南東部のドイナカにある地主の家)の超ワガママひとり娘と結婚してムコ養子に行かせるために激しい力で日奈子と別れさせた。

ゆりこも、政子六郎夫婦の手でてつろうと別れさせられた。

日奈子は麗彦と、ゆりこは元彦とそれぞれお見合いして、強制的に結婚することになった。

お見合い開始早々、座敷の雰囲気がどす黒く淀んでいた。

麗彦が、鋭い目つきで日奈子をイカクした。

となりにいた美代子は、おたついた声で麗彦に言うた。
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