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籠の中の天使
第9章 告白
やだ…。
消えて…。
自分が思い描く世界しか欲しくない私はこの現実から逃げたいとしか考えられない。
「それじゃ、失礼します。」
礼儀正しく峯岸君が保健室から出て行く。
「お前、そんなとこに座り込んで…、さっきから尻だけ見えてんぞ。」
カーテンを引いた南斗が私を見てクスクス笑う。
「南斗…。」
「いいじゃん。峯岸…、真面目だし誠実だし男前だと俺は思うよ。」
「嫌よ…、また怖い思いをするだけだもん。」
あの日の恐怖を訴えれば南斗が悲しげな表情をする。
「俺や北斗も怖いか?俺や北斗も、あの時の男の子達と同じか?」
「南斗や北斗さんは違うっ…。」
「なら、峯岸にもチャンスをやれよ。俺は無理矢理に付き合えとか言ってる訳じゃない。咲都子の将来の為を考えれば、人間付き合いが俺と北斗だけって訳にはいかないだろ?」
人間関係を通常にする為のリハビリとして教室に行ったり修学旅行に参加したのに、もっと必要だと思う南斗は峯岸君と友達になれと私に言う。
そんなの出来る訳がないと南斗に縋ろうとする私に更なる追い討ちを掛ける人が保健室に入って来る。
「持田先生…、ちょっといいですか?」
現れたのは千紗先生だ。
南斗が慌てて千紗先生の方へと向き直す。
「あら?相原さんは大丈夫ですの?」
まだ床にへたり込む私に向かって千紗先生の声がする。
「寝ぼけてベッドから落ちたんですよ。」
南斗の意地悪な声もする。
「あらあら…。」
カーテンを開き千紗先生が私に手を差し伸べる。
「立てる?」
とか聞いて来る。
「自分で…、立てます。」
俯いたまま自力で立ち上がれば可愛くないと感じたのか千紗先生が冷たい視線を私に向ける。