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籠の中の天使
第9章 告白



千紗先生の指先が南斗の白衣の袖を摘み


「お願い…出来ませんか?」


と弱々しい声で強請る。


「あー、まあ、他の部活のスケジュールの事もありますから…、調整して検討します。」


南斗は保健医の態度のまま千紗先生の言葉を受け入れる。

幸せそうな顔で千紗先生が笑う。


「よろしくお願い致します。」


自分の要件が通り、鼻歌でも歌いそうな勢いで千紗先生は保健室から軽やかな足取りで出て行く。


「真夏の合宿とか、こりゃ面倒だな…。」


千紗先生が居なくなると保健医じゃなくなった南斗が本音を呟く。


「だったら…、断れば良かったじゃん。」


夏休みは私と居てくれる約束なんだから…。

子供地味た嫉妬をぶつけちゃう。


「これも仕事だからな…。」


ひょうひょうとした表情で答える南斗に苛立つ。


「千紗先生とデート気分で合宿に行けばいいじゃん。」


峯岸君の件の仕返しだと南斗に嫌味を言ってしまう。


「デート気分とか絶対にならねーよ。真夏にスポーツ合宿だぞ?水分補給やら体調管理やらが一番面倒臭せえ時期にやる気満々で練習とかされたら100%、体調を崩すやつが出て来るのに、学生みたいにデートだなんだと浮かれてられる訳ねえわ。」


吐き捨てるように言い返して来る南斗が怖い。

どうして?

私と居てくれるって約束したじゃん。

傍に居てくれるだけでいいのに…。

悔しくて涙が出そうになる。

口を開けば、きっと我儘しか言えない。

私だけの南斗で居てよ…。

言えない言葉は私の胸の中で腐ってく。


「帰る…。」


部活が終わり、静かになった学校を出たのは夕陽が街を真っ赤に染めた頃だった。


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