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籠の中の天使
第9章 告白
北斗さんはゆっくりと私が居るベッドの隣に椅子を置き座る。
「何故、こんな無茶をした?」
問い詰める風でなく私を責める訳でもなく、少しばかしの笑顔を作る北斗さんが質問する。
いつものカウンセリングだとわかってるから出来るだけ正直に答えようと私なりに言葉を選ぶ。
「一人でも大丈夫だと思いたかったの。」
私の答えに北斗さんが考え込む。
この沈黙の時間は不安になる。
私の答えは何か間違ってたのだろうかと自分の答えをもう一度改めて考え直す。
「何故、一人で大丈夫だと判断した?」
再び、北斗さんの口から出た質問に戸惑う。
「だって…、北斗さんも南斗も私が普通の高校生になれたら嬉しいでしょ?」
褒めて欲しかっただけだ。
よく頑張ったって言って欲しかったのに…。
厳しい表情で眉を顰めて私を見る北斗さんの悲しげな瞳に泣きたい気分になる。
「普通の高校生は…、こんな無茶をしない。」
それが北斗さんの出した結論だった。
普通の高校生はちゃんと家族でご飯を食べる。
朝だって、朝食を食べてから学校に行く。
普通の高校生はちゃんと眠る。
少しくらいの夜更かしをする事はあっても、身体が要求する睡眠はそれなりに確保する。
私は違う。
あの日、心が壊れた私は食事をしたり睡眠を取ったりするという当たり前の感覚をほぼ全て失ってしまってる。
すぐに時間の感覚を失くすのも、その為だ。
生きる事に必要な生活そのものを拒否してしまった私が簡単には普通の高校生に戻れはしない。
例え保健室から出られないとしても南斗と学校へ行き、週末だけでも南斗と生活する事は私が普通の感覚を取り戻す為のリハビリに過ぎないと北斗さんは考えてる。