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籠の中の天使
第10章 快楽と戸惑い
私の髪は真っ直ぐ過ぎて前髪を切ると日本人形みたいになるから私は嫌いだと思う。
「日本人形みたいって逆に可愛いと思うけど…。」
私の髪を乾かす看護婦さんが笑う。
「そうかなぁ…。」
向井さんのように軽いウェーブが入って風にフワリと靡く大人びた髪型に憧れる。
南斗と並んで歩いても違和感の無い女の子になりたい。
「女の子はあっという間に大人になるものよ。」
看護婦さんが優しく微笑んで私を見る。
うちのお母さんがこんな人だったら良かったのに…。
そう思わせる優しい視線を感じる。
あの街の人は誰もが優しいのに…。
普通のお母さんや普通の高校生をするのが難しい街…。
看護婦さんが居なくなり、病院のベッドで退屈だからと久しぶりに見る携帯に固まった。
有り得ないほどのメッセージや着信が入ってる。
今までは南斗と帰る時間を連絡する程度で、1週間に1回だけ鳴るか鳴らないかってレベルの携帯だった。
なんで…、こんなに…。
恐る恐ると携帯の画面を開けば、杉山さんや上地さんのグループトークが目に飛び込む。
『咲都っ!大丈夫?』
から始まって、3日目の今日は
『咲都…、携帯見てくれない。』
となってる。
向井さんが
『きっと、携帯が見れないくらい体調が悪いんだよ。元気になったら連絡してくれるよ。』
と話してる。
どうしよう?
このまま黙ったままにしたら、また上地さんに無視したとか言われるかも…。
でも入院してるとか返したら、きっと病院は何処だとか言われちゃう。
この街には来て欲しくない。
自分の携帯にすら怯えてしまう。
峯岸君からも信じられないくらいの着信が入ってる。