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籠の中の天使
第2章 苦しみと光…
退院までの数日、南斗は毎日必ず私の病室にやって来る。
「欲しい物があったらなんでも言えよ。」
そうやって南斗は私を甘やかす。
「今日、お母さんが来た…。」
「おばちゃんにもっと来て欲しいのか?なんなら俺が呼んで来るよ。」
南斗の言葉に首を横に振る。
「もう…来て…、欲しくない…。」
不幸な私を悲しげに見つめるお母さんの視線が痛いから…。
「そうか…、だったら来ないように言っておく。」
南斗は穏やかに笑って私の我儘を受け入れてくれる。
毎日、主治医である北斗さんから私の症状を聞き、少しでも私が食欲を失くしたり吐いたりすると
「アイスを買って来たぞー。アイスってのは万能薬だ。」
と直ぐに近くのコンビニで買って来たカップアイスを私に差し出して来る。
「万能薬?」
「カロリーが高いから体力の回復が早いし、熱があれば体内から冷ましてくれる。吐き気を止める効果もあるし、何よりも…。」
「?」
「甘くて美味いっ!」
そうやって笑顔を浮かべる南斗は私用に買って来たはずのアイスを先ずは自分で1口分を食べてから、更に1口分をスプーンで掬い直し私の口元に運ぶ。
南斗に従いアーンと口を開ければ口いっぱいにバニラの香りが広がる冷たいアイスが放り込まれる。
「やっぱ、アイスはバニラに限る。」
「私はストロベリーの方がいいな。」
「咲都子は邪道だ。」
「アイスの好みに邪道とか無いもん。」
「いやいや…、大人は黙ってバニラ味だ。」
そんな風に南斗と笑いながら食べるアイスが好きだ。
南斗の努力で少しづつ体力が回復し、傷付いた心も癒される。
なのに南斗の手がほんの少しでも私の手に触れただけで身体がビクンと震えて強張る。