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籠の中の天使
第2章 苦しみと光…



辛そうな表情をする南斗が私から手を遠ざける。

生まれた時から南斗が抱っこしてくれるのが当たり前だったのに…。

私の物心が付いた頃には何処へ行くにも南斗が手を繋いで連れてってくれた記憶しかない。

春はお花見に…。

連休はアミューズメントパークに…。

夏はプールや花火大会、バーベキューやお祭りに…。

秋の運動会はお母さんが作ってくれるお弁当を南斗が預かって学校まで応援に来てくれる。

冬は寒いからと2人で暖かなコタツに入り、南斗の抱っこで眠りにつく私が居た。

その南斗に触れる事すら出来なくなる。

南斗の遠ざかった手を取り戻したいと心が叫ぶ。

南斗だけは失えないと思う私の手が南斗の方へと伸びれば、私を怖がらせないように南斗はゆっくりと、そしてしっかりと力強く私の手を握り


「俺は何があっても咲都子を傷付けたりはしない。咲都子は俺の天使だからな。」


と言って笑ってくれる。

俺の天使…。

小さい頃、南斗が私を連れて歩くと


『妹さん?』


と聞かれる事が多かった。

その度に南斗は


『違う…、俺の天使。』


と胸を張って答えてた。

何故、私を天使と呼ぶのかはわかんない。

ただ南斗はいつも


『咲都子は咲都子のやりたい事だけをやればいい。俺は咲都子の為にならなんでもしてやるからな。』


と言っては私を甘やかす。

獣達に傷付けられた私を前と変わらずに天使として扱ってくれる南斗だけには今までのように触れたいと思う。

その日の南斗は私が眠るまで、ずっと手を握ってくれた。

それ以来、南斗としか会話が出来ず、南斗にしか触らせない私へと変わってしまう。

南斗の変わらない笑顔さえあれば、私は私のままで居られる。

そう思ってたのに…。


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