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籠の中の天使
第2章 苦しみと光…



私が帰れる状況じゃないとわかってても、両親からすれば私はあの街の子だという意識がある為に、どうにかして街へ戻そうと説得する姿勢を崩しはしない。

あの街なら高校なんかに行かなくても誰も気にしない。

あの街なら誰からも傷付けられたりしない。

そんな古い考え方をする両親から南斗は私を守ろうとする。

30年ほど前なら300軒以上もお店が存在し、表通りから裏通りまで賑わいを見せる街だった。

今ではもう160軒程度しか残っておらず、料理組合の存続すら危なげな状況だ。

組合の役員であるお父さんはあの街を維持する為に必死になる。

私を縛り付ける街から出そうとしてくれる大人は南斗だけ…。


「帰ろう…。」


退院の日に南斗がそう言う。

私が帰るのは、あの街でなく南斗が用意してくれた新しい場所。

一応、あの街へは自転車に乗れば10分程度で行ける場所だけど、あの街の外側にあるというだけで私は心の何処でホッとする。

南斗が運転する車で向かった新居は小さな古いマンションだった。

それでもマンションの入口にはオートロックの自動扉があり、インターホンにはカメラとマイクが付いてる。

その小さなマンションの3階の角部屋が南斗の部屋。

部屋の鍵を南斗が開けてくれる。

中は2LDKになっててリビングを挟んで2つの部屋がある。


「こっちが咲都子の部屋な。咲都子は自分の荷物を片付けろ。俺は昼ご飯を作るから…。」


私の部屋に私の荷物を置きながら南斗が笑顔を見せる。

私の荷物と言っても、小さなスポーツバッグ1つ分しかない。

狭い私の家じゃ私の物なんか置く場所がなかったから小さな衣装ケースに入る程度しか下着も服も持ってない。

もう二度と学校へは行かないと決めた私だから、教科書も持って来なかった。


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