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籠の中の天使
第2章 苦しみと光…
年頃の女の子が当たり前に持ってるものを何も持ってない私が南斗の言う『自分の部屋』に入った瞬間だった。
目を見開く私の頬に一筋の滴が零れ落ちる。
そこは間違いなく極普通の女の子の部屋だと思う。
大きな窓があり、洋風の可愛らしいベランダが見える。
電気など点ける必要が無いほどの明るくて柔らかな初夏の陽射しが部屋の中を照らしてる。
白い扉の小さなクローゼット…。
白いベッドに白いテーブル…。
たった、それだけしか家具の無い6畳程度の部屋だというのに、普通の子が当たり前に持ってる『自分の部屋』とはこういうものなのだと実感した今は涙が止まらない。
自分の手で顔を覆い、声もなく、ただ静かに泣く。
今まであの街で普通の子じゃない経験をして来た悲しみと、これから南斗が与えてくれる普通の未来に対する安堵が入り交じり泣き続ける私の頭に南斗の手がそっと乗せられる。
「ほら、早く荷物を片付けて飯にしよう。今日はこれから、いっぱい咲都子の為に買い物をしなきゃならないんだぞ。」
少し照れたような声がする。
ゴシゴシと手の甲で涙を拭い、無理矢理に南斗に笑顔を向ける。
「私の為?」
「カーテンとかベッドの布団のシーツとか…、咲都子の好みがわかんねえから、まだ買ってないんだよ。」
「私が決めてもいいの?」
「ここが咲都子の部屋だからな。」
南斗が満面の笑みを浮かべる。
見慣れたはずの笑顔なのに、私の心がその笑顔の傍に居たいのだとと望むから南斗の身体に腕を回して、その広い胸に顔を埋める。
一瞬、南斗が驚いた表情で目を大きくする。
私の手が南斗の背中のシャツを握り締めれば、すぐに落ち着いた表情へと代わり私の頭を撫でてくれる。