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籠の中の天使
第13章 夢の中へ
携帯から視線を上げたノアがやっと私と市原さんに気付く。
「日本じゃ、こういうのを馬子にも衣装って言うんだっけ?」
とぼけるようにノアが言う。
やっぱり似合わないのだと凹む私の為に市原さんがノアの足を軽く蹴る。
「玲夜君…、日本では、それを言っちゃうとデートの前に振られるわよ。」
「マジか?日本語って面倒だな。」
「普通に似合うって言ってあげなさい。」
「いや、俺の想像以上に良くなったと言いたかった。」
市原さんがノアの言葉にクスクスと笑い
「デート…、頑張ってね。」
と私に耳打ちしてからお店の奥へと消える。
ソファーから立ち上がるノアが再び私に手を差し出す。
「ここからが本番だな。」
ノアの手を握る手が震える。
「どうした?」
ノアが私の顔を覗き込む。
「こんな服…、買えない。」
「気にすんな。全部半額以下の買い取りだ。」
「嘘っ!」
「嘘じゃねえよ。ここは普段から芸能人が使う店で宣伝してくれる条件付きで半額になるの。」
「私…、芸能人じゃないもん。」
「咲都子くらい目立つ女子高生が着てたら、それだけで宣伝になると穂奈美さんが判断した。お前にその気があるなら読モとかの仕事を紹介してやるよ。」
「読モ?」
「穂奈美さんがコーディネートする雑誌の読モ…。」
「モデルの仕事なんか絶対に無理だよ。」
「無理じゃない。咲都子はまだ高校生だ。なりたいものに何にでもなれるさ。」
ノアが優雅に笑う。
その笑顔が南斗と重なってみえる。
南斗とは違うやり方をするノアなのに、南斗と同じ事を言うノアにドキドキする。
初めてのデートは適当だって言ってたくせに…。
ノアのデートは私が考えるレベルよりも遥かに高い。