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籠の中の天使
第13章 夢の中へ
山に入ってからはノアの運転するスピードが緩やかになる。
フロントガラスの向こう側が突然、明るくなったと思うと湖面がキラキラと輝く湖が見えて来る。
その湖畔にある小さな公園の駐車場にノアが車を停める。
「ここでデート?」
「ここは前菜…。」
「前菜?」
ノアの不思議な言葉の意味がわからない。
車から降りて静かな公園を2人で歩く。
彫刻の森と書かれた公園の入口でノアが入場券を買う。
「美術館だからお子ちゃまは騒ぐなよ。」
意地悪な口調でノアが嫌味を言う。
「そんな事はしないもん。」
ノアに背を向けて歩き出す私の手をそっとノアが握る。
「デートでいきなり逸れようとすんな。」
優しい叱り方…。
「ノアが意地悪だからだよ。」
「可愛いと意地悪したくなる男心は理解してくれないのか?」
「可愛くない女だもん。」
「そういうとこが可愛いんだよ。」
不貞腐れる私をノアは大人の余裕で笑う。
同じ学生だから…。
ノアには不思議な力があるから…。
南斗のように追い詰めて苦しめるだけの関係にならないノアに甘えて寄り添う。
公園には私には理解が出来そうに無いオブジェがあちらこちらに置かれてる。
「『人生』って…、これの何処が人生なんだ?」
オブジェの前でノアが目を細める。
どう見ても黒い岩の様な石が青い芝生の上にデンと座ってるだけのオブジェに『人生』と立て札が付いてる。
「この石の尖り具合が複雑な人生を表してるんだよ。」
適当な事を言う。
「絶対に違う…、お前、適当な事を言うな。」
「楽しければいいじゃん。」
「楽しいか?」
「うん…。」
楽しいと思う。
意味がわからないオブジェを見てるだけなのに、ノアが傍で笑ってくれてるだけで幸せを感じる。