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籠の中の天使
第14章 同情
南斗の言葉を私の頭が否定する。
「何…言って…。」
馬鹿にしたように南斗を見れば、南斗はいつもと変わらない優しさで私を見る。
「もう…9月だ。」
そう呟く南斗がガックリと項垂れる。
嘘だ…。
だって南斗は嘘が下手だもん。
私は南斗が居なくても大丈夫だと頑張ってた。
一生懸命に頑張ったのに…。
ノアが見せてくれた夢にしがみつく事で精一杯だった私の心は現実を拒否して時間の感覚を失った。
「大丈夫だよ。咲都子…、俺と帰ろう。俺と学校に行って、落ち着いた生活に戻れば、またすぐに、いつもの咲都子に戻れると北斗が言ってるから…。」
南斗が私を説得する。
私の異変に気付いたのはお母さん…。
ずっと部屋に引き篭り、お母さんがご飯だと呼んだ時だけ部屋から出て来る私は毎日、同じ事をお母さんに聞く。
『今日は何曜日?』
と毎日聞く私にお母さんが聞き返す。
『何かあるの?』
お母さんの質問に
『木曜日は『たこ八』が定休日だから…。』
と答える私なのに、お母さんが木曜日だと言っても私は無言のまま部屋に籠る。
お父さんはそういう年頃なんだろうと深く追求をしなかった。
食事はしてる。
睡眠もしてる。
熱を出したりもしていない私だというのにお母さんだけが不安を感じて北斗さんに相談した。
南斗の家を勝手に飛び出した私に対して、南斗と北斗さんの間でしばらくは様子を見ようという事になってたらしい。
追い詰められていたのは南斗でなく、私の方だと南斗が言う。
「咲都子が望むなら、俺が学校を辞めたって構わない。だから咲都子…、俺のところに帰って来い。」
南斗が私に手を差し伸べる。
その手を振り払ったところで私は普通の子として生きてはいけないとわかってる。