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籠の中の天使
第14章 同情
「嫌よっ!」
南斗を突き飛ばすなり、家を飛び出していた。
私は大丈夫…。
私は普通に生活が出来る。
南斗が居なくても私は大丈夫なのだと誰かに言って欲しい。
Tシャツに短パンでサンダルだけで街を走り抜ける私を道行く人が振り返る。
だって、もう9月…。
残暑があるとはいえ、真夏の様な陽射しは感じない。
しかも日暮れ前…。
無我夢中で走る私が向かうのは『たこ八』…。
きっとノアが居る。
ノアのバイトは夏休みいっぱいまでとおばさんが言ってた。
ノアなら私が一人でも大丈夫だと言って笑ってくれる。
その期待は大きく外れる。
お店に立ってたこ焼きを焼いてるのはノアではなく、腰痛が治ったおじさんだ。
「咲都ちゃん、どうした?たこ焼き、食べるか?」
優しいおじさんが聞いて来る。
おじさんの声におばさんもお店の前に出て来る。
「咲都子ちゃんじゃない。随分と久しぶりね。」
聞きたくないおばさんの言葉に涙が溢れ出す。
「おばさん…、ノアは?ノアは来てる?」
必死にノアの事を聞く私の異変を感じたおばさんが
「ノア君?連絡してあげるから、お店でおばさんと待とうね。」
と私の肩を抱いてお店の中に入れてくれる。
前にも、こんな事が何度もあった。
あれは高校に入る前の事…。
仕事で居なくなる南斗を探して街中を彷徨う私を保護してくれるのは『たこ八』のおじさんとおばさんの役目だった。
それは今も変わらない。
狼狽えて怯える私におばさんが付きっきりで面倒を見る。
「ノア君なら、すぐに来るって…。何があったか話せる?」
温かいココアを私に飲ませておばさんが状況の確認をする。