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籠の中の天使
第14章 同情
どう説明をすれば良いかがわからない。
こんなにも時間の感覚を失ったのは初めてだから…。
「南斗が…、もう9月だって言うの。今はまだ8月だよね?おばさん…、まだノアはバイトしてるよね?」
支離滅裂な事を言いながら私はおばさんに自分が納得する答えを求めてしまう。
困った表情をするおばさんが私の背中を摩ってくれる。
「大丈夫、大丈夫…、ノア君が凄く心配してたんだよ。今も咲都子ちゃんの為に急いでここに来るって言ってるからね。」
おばさんは私の質問に答えない。
闇雲に泣き続ける私を優しく慰めるだけだ。
30分ほどした頃だった。
「お前っ!今まで何してたっ?全く連絡が取れないとか、いきなり俺に会いたいと言ってるとか…、どんだけ心配させんだよっ!」
ノアの喚く声がする。
お腹まで響いて来るその声にビクリとする身体が強張る。
「ノア君…、まあ、ほら…、そんな風に咲都ちゃんを責めたらダメだって…。」
おじさんが興奮してるノアを宥める。
ノアが怒ってると感じるだけで私は怯えてしまう。
「別に…責めてはいねえよ。」
不貞腐れるノアなのに私の頭にポンッと手を置いて来る。
「ちょっと…、話せるか?それとも家に送った方がいいのか?」
赤い炎が私の瞳を覗き込む。
真っ直ぐで揺らぐ事ないノアの瞳に見つめられると少しづつ乱れてた私の心が落ち着きを取り戻す。
「助け…て…、お願い…、助けて…。」
ノアに懇願する。
「始めっから、そのつもりだ。」
涙でぐしゃぐしゃになる私の顔をノアが笑う。
ノアなら助けてくれる。
安心する私はノアが必死になって涙を拭ってくれるのに、執拗いくらいに泣き続けた。