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籠の中の天使
第14章 同情
完全に日が暮れた街をノアと歩く。
「寒くないか?」
真夏姿のままな私の心配をしてる。
本当に、もう9月なのだと納得する。
「今日って…、9月の何日?」
ノアの言葉なら受け止められる気がする。
ノアの言葉には嘘がない。
「9月の19日、金曜日…。」
「そっか…。」
あのデートはひと月以上も前の事…。
私にはまだ昨日の事のように感じる。
「『たこ八』のおばちゃんからお前の話を色々と聞いた。」
歩きながらノアが話す。
「頭がおかしい高校生だって?」
精一杯の強がりで笑う。
「咲都子はまともだよ。」
私の手を握ってノアも笑ってくれる。
「今日の日付けもわかんなくなるのに?」
「今もわからないままか?」
ノアの質問に首を振る。
日付けは、ちゃんとノアが教えてくれた。
「だったら明日も明後日も俺が教えてやる。ちょっとは本気でお前を助けてやるよ。」
自信満々に勝ち誇った顔で笑うノアに涙が出る。
「それは、ノアの迷惑になるだけだよ…。」
「俺が一度でも迷惑だって言ったか?」
「でも…。」
「咲都子は可愛く甘えてりゃいいんだよ。」
ノアはいつだって堂々と歩く。
自分が着てたパーカーを私に掛けて、あの街の駅の向こうへと歩き続ける。
「何処に行くの?」
この街は駅を挟んで違う街になる。
駅の向こう側は私が住む街とは全く違う世界が広がってる。
昔は何もなかったとあの街の人は言ってた。
今は土地開発が進み、駅の向こう側は新しい街になっている。
元々が山だった場所にバスターミナルが出来て、新しいショピングモールが出来た。
あの街やあの街と共に錆び付いた商店街は廃れてくだけなのに、新たに開発された街は綺麗な住宅やマンションが建ち並び、新しい人達が増えていく。