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籠の中の天使
第14章 同情



「親父…、日本とアメリカの両方でそれなりに力のあるレーベルをやってるからな。」

「レーベル?」

「レーベルってのは契約したアーチストのCDやPVなんかを制作して出してる会社な。いわゆる著作権は全てレーベルの物として保護して扱う事になる。」

「芸能プロダクションみたいなの?」

「マネージメントするプロダクションとは違う。一応は子会社にプロダクションも所有はしてる。」


世界が違うレベルの話を聞いても私にはさっぱりわからない。


「祖母の遺産ってのがあってさ。何故か俺の分もある訳…。」

「ノアの分も?」

「俺が一生、遊んでても使い切れないくらいのやつ。」

「嘘だぁ…。」

「マジ…、だから俺も自分がやりたい事が出来る未来を探してる。俺と一緒に咲都子も自分の未来を探してみないか?」


高く聳え立つマンションを見上げたまま、動かずに立ち止まってしまったノアも私と同じように自分の未来をまだ見つけられないままなのだと感じる。


「ノアが…、一緒に居てくれるのなら…。」


ノアの大きな手を握り返す。


「じゃ、決まりな。」


ニヤリと笑ってマンションに入るノアが眩しく見えた。

最上階には僅か4軒しか家が無い。

全てが角部屋になる設計だとエレベーターに乗るノアが言う。


「後は、全部がメゾネットだというくらいで大した事ねえぞ。」

「メゾネット?」

「最上階だけ二階建てになってる。」

「充分に凄いよ。」


ノアの部屋の扉の前で緊張する。

こんな凄い家に連れて来られたのは生まれて初めての経験…。


「普通のマンションと同じだと思え…。」


私と感覚が違うノアが扉を開ける。

普通じゃないほどに広い玄関があり、長い廊下が見える。


「この玄関、私の部屋よりも広い…。」


それが私の本音として声に出る。


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