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籠の中の天使
第14章 同情
ノアと私の違いを感じる私の足は玄関で止まってしまう。
そんな私の背中をノアが押す。
「広いだけで何も無い。家族も居ない。煩く言うやつも居ない。俺は1人なんだと思い知らされるだけの無駄な広さってやつだ。」
寂しげに笑うノアが私の肩を抱いて中へ誘う。
「お父さんやお母さんと暮らさないの?」
「あの人達の生活はアメリカが中心になりつつあるからな。」
「じゃあ、いつかはノアもアメリカに帰るの?」
ノアに促されてリビングらしき部屋に入る。
吹き抜けになる高い天井…。
窓は天井の高さまである。
リビングの一部はまるでスポーツジムのように本格的なトレーニング機器が置かれてる。
ジムの奥の壁には棚があり、その棚には色々なトロフィーや写真が飾ってある。
その棚の一番端にあった楕円形のボールをノアが片手で掴む。
「ラグビー…じゃないよね?」
「アメフト…、これをやる為に俺は日本へ帰って来たのに、もう二度と出来なくなった。」
泣きそうな表情で写真を見るノアの辛さが伝わって来る。
写真の中に居るノアはヘルメットを抱えてチームメイト達と一緒に笑ってる。
「アメフトって…、アメリカの方が強いよね?」
「元々は親父だけがアメリカと日本を行ったり来たりしてたんだ。お袋は…まぁ、売れない女優ってやつでさ。結局、親父と結婚してからもしばらくは日本の芸能界に残ってた。」
「女優さんだったんだ。」
ノアの整った顔は女優である母親譲りなのだろうかと想像する。
小学校まではお母さんと日本に居たノアだけど、若さを失い女優としての限界を感じたお母さんはノアを連れてお父さんが居るアメリカへと生活を移した。
「ヒョロヒョロのアジア人なんか向こうじゃ、虐めのターゲットにしかなんねえの。」
強くなる為だけに始めたのがアメリカンフットボールだった。