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籠の中の天使
第15章 不思議な味
冷蔵庫を開けたノアがしばらく悩む。
「材料…あるの?」
開けられた扉の中を覗けば、卵があるのは見えるけど、それ以外の食材が見当たらない。
「俺…、ほとんど外食だしな…。」
「まさか…卵しかないの?」
「いや、あるにはあるけど…。」
次は冷凍庫の引き出しをノアが開ける。
中には私には馴染みのない食材がぎっしりと詰まってる。
表示が全て英語で書かれた不思議な食材をじっと見る。
「凄い…、これって何が入ってるの?」
「ターキーとか…。」
「ターキー?」
「七面鳥…、感謝祭の時に丸焼きにするやつ。」
「そんなのオムライスに使えない。」
「後は、白トリュフとかキャビアとか…、この前、親父が持って来たオマールとかある。」
「オマール?」
「海老だな。」
「ノアん家の冷蔵庫って変…。」
久しぶりに笑ってた。
「笑うな…。」
ケラケラと笑う私を羽交い締めしてノアも笑う。
ノアと作る料理は南斗と違ってドタバタになる。
丸太を切ったようなまな板の上でナタのような包丁をノアが勢いよく振り下ろす。
ダンッと綺麗なキッチンには似合わない音が鳴り響く。
「ひぃっ!?」
私だけが悲鳴を上げちゃう。
「ほら…、切れた。」
真っ二つになった大きな海老をノアが私に見せて来る。
「この海老の殻って…、普通に剥けないの?」
「オマールってザリガニに近いからな。ちょっとやそっとじゃ外れない。」
「ザリガニなのっ!?」
「多分…、でも海老のはず…。」
不安な食材を使って作る料理は謎めいたものになる。
「ケチャップは?」
「トマトソースならある。」
「普通のケチャップとかないの?」
「俺…、料理しない。お袋も出来ない。作れるのは親父だけ…。」
ノアがどんな暮らしをして、その立派な身体を作ったのかが不思議で堪らない。