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籠の中の天使
第15章 不思議な味
ご飯を炊いて、海老やセロリを炒めてトマトソースに絡める。
「なんか、いつもと味が違うー!」
嘆く私をノアが笑う。
「やっぱり咲都子が作る料理って不味いんじゃね?」
「絶対にそんな事はないもん。」
結局は不安だからと、ノアと一緒にレシピをネットで調べて試行錯誤しながらのオムライス作りになってしまう。
チキンブイヨンや白ワインで味をどうにか整える。
「これで不味かったら泣くかも…。」
散々、苦労した挙句、実に不細工なオムライスが完成する。
「咲都子が頑張って作ったんだから、不味くても食うよ。」
不意打ちの笑顔にドキリとする。
ノアの笑顔に南斗の笑顔が重なって見える。
『咲都子が頑張って作ってくれた料理を不味いとか思わねーよ。』
そう言って南斗はいつも笑ってくれた。
心の片隅で淋しさを感じる。
「そういう暗い顔すんな。それとも、また俺にお仕置きされたいとか思って期待してんのか?」
ノアが私を抱きかかえてカウンターに座る。
「お仕置きとか…、やだ…。」
「だったら、笑って飯を食え。とりあえず俺の目標は咲都子を太らせる事だ。」
「太るとか嫌よ…。」
「お前、骨と皮だけじゃん。」
私の頬の皮を抓るようにノアの指先が引っ張る。
「ほら、口を開けろ。」
スプーンに掬ったオムライスをノアが私の前に差し出す。
「お腹が空いてるのはノアでしょ。」
「最初の味見は咲都子がしろ。」
ノアが差し出す一口を食べてみる。
「……。」
「まさか、マジに不味いのか?」
「微妙…。」
不味くはないけど、初めて食べる味としか言えない。
私の次にノアが食べる。
「ちゃんと普通の味になってんじゃん。」
ノアは平然として不思議な味のオムライスを食べてくれる。