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籠の中の天使
第2章 苦しみと光…
「この話は…、また後にしよう。」
そう言うと南斗は私にオムライスを食べてしまえと促す。
沈黙のまま食べたオムライスはなんだか苦く感じた。
昼から南斗と買い物に行き、私の部屋は白い家具だけだったのに淡い緑のカーテンとベッドシーツの色が足され、爽やかな初夏に相応しい部屋へと変化する。
それでも、それは偽りの部屋だ。
私はまだあの街の籠娘のままなのだという思いが私の心にドス黒い濁りがポタポタと染みを作る。
その日の夜だった。
初めての自分のベッドで眠れない私が居た。
喉がカラカラに乾き、台所で水を何度も飲む。
段々とお腹が気持ち悪くなり、最後はトイレでゲーゲーと吐く私へと逆戻りする。
学校へ戻そうとする南斗の気持ちは、頭では理解が出来るけど、心が拒否して身体がついていけない。
深夜だというのに、南斗が自分の部屋から出て来てトイレにしがみつく私の背中をそっと撫でる。
「今夜は…、俺の部屋で寝るか?」
南斗の声が震えてた。
気付けば南斗が私を抱き上げて南斗の部屋にあるベッドまで運んで寝かしつける。
南斗の腕枕…。
私の乱れた髪を整えるように南斗の大きな手が撫で付ける。
「学校…行かなきゃいけないの?もしも…、学校に行くなら家に帰らなきゃいけないの?」
そう質問する私の瞳から大粒の涙が零れ出す。
「俺は咲都子を守るって決めたんだ。咲都子はあの街の籠娘なんかじゃない。咲都子は俺の天使だから…。いつかは大きな白い翼を羽ばたかせて、あの街から飛び立てる日が来る。」
子供が寝付くまで夢物語を読み聞かせる親のように南斗が私に色々な話をゆっくりと語る。
高校に行き自分の将来を考えて、やりたい事が出来たら大学でも専門学校にでも行けばいいと南斗は言う。
高校も南斗が居る保健室に通うだけだと言って南斗は笑う。