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籠の中の天使
第15章 不思議な味
国松を名乗れず、日本人になれないノアの痛みを感じる。
あの街から出られず、籠娘になるしかないと諦めてる私とは違って強いノアは自分の運命と戦える道を探ってるようにも見える。
あっという間に眠ってしまったノアに少しホッとした。
私の中で南斗を想う気持ちがまだ疼いてる。
ノアは南斗と同じ優しさと温もりを与えてくれるのに…。
私の心が闇の中を彷徨う。
強くなりたい…。
せめてノアの半分でもいいから…。
いつの間にか私もノアの腕の中で眠りに落ちていた。
目の中が真っ白になる感覚がする。
薄らと目を開けると大きな窓から、まともに朝陽が差し込んでて眩しいとか思う。
あの街の私の部屋では朝陽が差し込む窓すらなく、私の夜は絶対に明ける事がなかったから、初めての感覚に戸惑いを覚える。
「ここ…。」
何処?
寝ぼけた頭で考える。
「やっと起きたか?」
頬からリップ音がして、お腹に響く声がする。
「ノアっ!?」
夕べ、ノアの部屋に泊まった事実を思い出す。
「涎、垂らしてよく寝てたな。」
ニヤニヤする意地悪な赤い瞳が私を舐めるように見る。
「やっ…。」
涎を確認しようと口元に手を当てる。
そんな私をノアがクスクスと笑い出す。
「ノアの意地悪…。」
「咲都子が全然、起きねえから…、起こそうかとも思ったけど可愛い顔して寝てるから起こせねえじゃん。」
ゆっくりとノアが私を自分の膝に抱きかかえる。
「今日が何月の何日か言えるか?」
私の瞳を覗き込んで聞いて来る。
「9月の…、20日?」
自信なく答えれば
「よく出来ました。」
とノアが私の額にキスをする。