この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第16章 罪な事
私が押し黙ると車を運転するノアが私の頭を撫でる。
「悪い…、咲都子に八つ当たりするつもりはないんだ。」
すぐに、いつもの優しいノアに戻るから、ノアの肩に頭を寄せる。
「ごめんなさい…、ノアに助けて貰ってばかりなのに、変な事を言ったりして…。」
「気にすんな。咲都子はそのままの咲都子でいいよ。」
ノアに甘えてるだけの私で良いとノアが言う。
南斗は私1人でも頑張れる人間になれと言っていた。
私がこのままノアに甘えてて良いのだろうかと不安になる。
1人になるのは怖い…。
でも1人でも生きていけるようにならなければならないと南斗に言われ続けて来た。
1人で生きていけないのなら、あの街へ戻るしかなくなる。
籠娘は…籠から…いつ出やる?
頭の中で意地悪な唄がぐるぐると周り私を囲う。
「着いたぞ。」
ノアの声が私を現実へと引き戻す。
市原さんのお店…。
憧れの人…。
中学生の時からティーン雑誌で読モをしてた市原さんは専門学校でデザイナーの資格を取り、独自のブランドを立ち上げた。
お店の商品の中には、当然、市原さんがデザインした服もあり、ちょっと人気のある女優さんやタレントさんがテレビなどで
『市原さんがデザインした服しか持ってません。』
と発言するほどの人気ブランドだ。
人気なのはブランドだけじゃなく、コーディネートに対する発言力も半端ない。
市原さんはインフルエンサー的発言力を持った人…。
彼女が
『空が暗い冬の日には暖かみのある赤のアイテムは映えコーデとして必須です。』
と呟くだけで街中の女の子が赤いコートやバッグで街を赤く染めてしまう。
それほどまで誰もが注目するコーディネーターの市原さんに憧れを感じないはずがない。