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籠の中の天使
第16章 罪な事
車の運転をするノアがため息を吐く。
この先へは行きたくないとノアが言ってるような気がする。
「あのさ…、服は市原さんが用意してくれたので充分だよ。」
ノアが行きたくない場所にまで行きたいとは思わない。
「服…じゃない。頼んであったのは咲都子の下着…、それを百貨店に取りに行くだけだ。」
ノアが苦笑いをして私を見る。
「わざわざ百貨店に?」
「佐丸って知ってるか?そこの娘がランジェリーショップをやってんだけど、昔っから怖い人で俺は苦手なんだよ。」
「怖い人なの?」
「怖いよ…、あの人の前じゃ嘘とか絶対に通用しない。」
「だったら…、嘘とか言わなければいいだけじゃん。」
「まあ、会えば咲都子にもわかるって…。」
車は佐丸という名の百貨店へと向かってる。
あの街の人でも知ってる大きな老舗百貨店…。
小さな頃に一度だけ家族でレストランに行った事がある程度の思い出の場所で、基本的に高級百貨店であるイメージしかない佐丸には全く近寄る事などなかった私が、たかが下着の為に行く事になるとは思ってもみなかった。
百貨店の駐車場に車を停めたノアは開き直ったように私の手を取りエレベーターに向かって歩き出す。
「沙来姉、咲都子には優しいと思うから気にすんな。」
俯く私の顔を指先で上げるノアが笑ってる。
「でも…、怖い人なのでしょ?」
「怖いというか…、男にはやたらと厳しい人なんだ。弟が居るけど、その弟ですら裸足で逃げ出す姉ちゃんって感じ…。」
「男の人に厳しいの?」
「そう、その代わり女の子には激甘…、だから咲都子は大丈夫。」
「なんで男の人にだけ厳しいんだろ?」
「沙来姉自体が男勝りな人だからなぁ…。」
頼りない男はお断りという沙来さんはバツイチだとノアが苦笑いを見せる。