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籠の中の天使
第16章 罪な事



「咲都子ちゃん…よね?」


日本人離れしたくっきりとした派手な顔立ちの沙来さんがノアのように力強い目力で私を真っ直ぐに見つめる。


「はじめ…まして。」


ノアの後ろに隠れたまま沙来さんに挨拶をする。


「やぁね。別に噛み付いたりはしないから出ておいで…、咲都子ちゃんのイメージは穂奈美に聞いてたから、それなりのランジェリーを用意してたけど、本人を見たら気が変わったわ。」


言いたい事を一方的に言うと沙来さんはお店の奥へと入ってしまうからノアが私の背中を押して


「行って来い…。」


とか言い出す。


「私…1人で?」

「ランジェリーショップに男が入るのは…。」


困った表情をするノアについて来て欲しいとは言えない。

お化け屋敷に入る気分で恐る恐ると沙来さんのお店に入ってみる。


「こっち…。」


お店の奥にある扉を開けた沙来さんが私を待ってる。

その扉の向こうは試着室があり鏡に囲まれた小さな部屋だ。


「ちょっと、身体に触るけど…、大丈夫?」


沙来さんが私の目を見ながら聞いて来る。

怖いけど…。

凄く真っ直ぐな人だと感じる。

歳は北斗さんと同じくらいだと思ったけど沙来さんの方が表情によっては、もっと若く見えたりもする。


「あの…。」


戸惑う私を沙来さんがクスリと笑う。


「怖がる事はないわよ。うちはランジェリーショップで咲都子ちゃんは下着を買いに来たお客様なのだから…。」


鏡の前に立たされた私の肩や腰を緩やかな手付きで沙来さんが触り出す。


「これは私の自論だけどね。女の子が男に下着を買わせる行為は上等な女の証だと思うの。でもね…、その気の無い男に買わせると、それは罪な事だとも思うわ。」


私の身体を触りながら沙来さんが耳元で囁いて来る。


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