この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第16章 罪な事
洋服に負けるなとか言われても…。
自信の無い私は俯くだけになる。
私はちっぽけで醜い籠娘だもの。
そうやって卑屈になる私の頬を沙来さんが綺麗な指先でムニュリと抓る。
「穂奈美はね、穂奈美なりのプライドがあるの。自分のコーデが似合わないと思うような子に、幾らあの玲夜の頼みだからとしても自分の服を着せたりしないわ。」
「市原さんが…。」
「どれだけ素敵な服を着たとしても咲都子ちゃん自身が変わらなければ穂奈美の服が可哀想よ。」
「私自身が…。」
沙来さんの言葉で変わりたいと思う。
私が変われば、南斗に少しでも私という子を1人の女として認めて貰えるのだろうかと必死に悩んじゃう。
「まあ、あんまり変わり過ぎたら玲夜が可哀想になるかもしれないけど、玲夜は男だし、ウジウジするようなら私と穂奈美が蹴飛ばしてやるから大丈夫よ。」
私の考えを見抜く沙来さんにドキドキばかりする。
「ノアは…。」
「いいの、いいの。玲夜はちゃんとわかってる。わかってて咲都子ちゃんを変えてあげたいと変な漢気を出してる。でもね、若い時はそれでいいの。私らみたいにオバハンになったら、そんな馬鹿な事はやってられないもの…。」
懐かしげに私を見る沙来さんの目が優しくなるから、怖い人なのか優しい人なのか自分でもよくわからなくなってしまう。
沙来さんの言葉を信じて、お店を出た。
今までとは違う自分に変わりたいとはいえ簡単に変われるとは思えず、あれこれと悩むだけの私になる。
百貨店のエスカレーター脇にあるベンチに向かえば私を待つノアが見えて来る。
「沙来姉に気に入られたな…。」
ノアが苦笑いをして私の頭を撫でる。