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籠の中の天使
第16章 罪な事



私の何を気に入って貰えたのかはわからない。


「沙来さん…、怖いけど…、優しかった。」


初めて会ったばかりの私の背中を押してくれた人…。

私の嘘を見抜いてるのに責める事も叱る事もせずに、そのまま受け入れてくれた気がする不思議な沙来さんを素直に好きだと思う。


「んじゃ、その姉さんのお勧めの美容室に行くか…。」


ノアが私の手を引いて歩き出す。


「でも…、美容室とか…。」


今の私にはお金がない。

ノアが支払う事になるのに、沙来さんのお勧めの美容室とかレベルの高いお店に行くのは気が引ける。


「行かなきゃ俺が沙来姉に殺される。」

「ノアが?」

「沙来姉はそういう人だからなぁ…。多分、美容室の方にはもう俺らが行くと連絡済みに決まってる。」

「そんな…。」

「俺が咲都子の服や下着を穂奈美さんと沙来姉に頼んだ以上、中途半端な事をしたら沙来姉に怒られるってだけだ。だから咲都子は何も気にする必要はないよ。」


クスクスと笑いながらもノアはいつものように威風堂々として百貨店の中を歩く。

少しでも自信が持てる自分に変わりたいと思う私は、前だけを向いて歩き続けるノアに必死について行く。

百貨店を出たノアの車はお洒落で閑静な街へ向かう。

沙来さんのお勧め美容室では、待ってましたとばかりに私とノアをスタッフの人達が取り囲む。


「やだ…、今日は女の子の方だけ?」

「男の子の方も女の子に合わせた方がよくない?」

「沙来さんの依頼だし、2人まとめてイメチェンしちゃう?」

「お揃いのヘアスタイルでラブラブ感アップはありよね?」


4人の女性スタッフが遠慮なく私とノアの髪を触り出す。


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