この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第17章 スタートライン
引き籠もりばかりを繰り返して来た私の肌は太陽にほとんど当たる事がなく、病的なほどに白い。
「本当に羨ましいわよ。私なんか白いお肌なんかとっくに諦めたから逆に日サロで黒くなってやると居直るしかないもの。」
千鶴さんの言葉に思わず吹き出してた。
「そうそう、そうやって笑えば咲都子は充分に可愛いわよ。穂奈美だって咲都子の白いお肌に合わせたファッションを優先してる。私も咲都子のスタイルを肌に合わせたカラーにするつもりよ。だから自信を持って前を向いてなさい。」
私の頭からタオルを外しながら千鶴さんが私の髪をじっと見る。
「やっぱり白いお肌にはアッシュ系かベージュ系…。穂奈美はベージュ系で攻めてるから、ミルクティーがお勧めね。」
独り言のようにそう呟いた千鶴さんが私の髪の色を染める段取りを始める。
「染めちゃうのですか?」
うちの学校はパーマやカラーリングを禁止してる。
「染めると困るの?」
千鶴さんの手が止まる。
困るのだろうか?
学校に戻るつもりのない今の私は何も困らない。
「染めても大丈夫です。」
変わりたいと願う。
髪が変わったくらいでいきなり自分が変われるとは思わない。
それでもノアや沙来さんのように真っ直ぐに前を向いて歩けるようになりたいと思う。
「人は…、髪や服を変えただけで…、そんなに簡単に変われるものですか?」
私の疑問を呟く。
別に千鶴さんに答えを求めてるつもりはない。
自分の中で渦巻く不安をそのまま口にしただけだ。
それでも千鶴さんはしっかりと答えてくれる。
「新しい洋服を着た時、咲都子はどんな気持ちになる?」
私の髪にハケで染料を塗る千鶴さんが鏡越しに私を見る。