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籠の中の天使
第17章 スタートライン



千鶴さんの質問をゆっくりと考える。


「嬉しい気持ちと少し不安な気持ちになります。」


素直にそう答える。


「嬉しいのは何故?」

「今までの自分と違う人間になれる気がするから…。」

「なら、不安なのは?」

「私に似合わない服だったらどうしようと思うから…。」


南斗が買ってくれる服…。

いつも不安ばかり感じてた。


「穂奈美が選んだ服でも不安になる?」


千鶴さんの更なる質問に首をブンブンと横に振る。


「市原さんのコーデは凄いですっ!彼女が選んだ服に間違いなんかあるはずがないです。」


興奮してケープの中で握り拳を握る。


「だったら新しくなる自分を素直に喜べるのよね?それをそのまま受け入れるだけよ。それが変わるって事…。人は何かと戦わなければとか考えるとファッションも攻撃的になる。優しくなりたいと思う人は柔らかな色使いのアイテムが多くなる。変わるきっかけは髪や服だけじゃないわよ。住む場所や友達などの人間付き合いだって変われば自分自身も変わってく。咲都子は変われるチャンスを貰えたのだから何も考えずに変わればいいのよ。」


今回のイメチェンは私自身が変わるチャンスだと千鶴さんが言う。

私の髪を変える千鶴さんと色々な話をする。


「私って、アメリカで捨てられてた子なの。だから実際のところ自分が中国人なのか日本人なのか韓国人なのかすら知らないの。」


千鶴さんの話に胸が痛くなる。


「でも…、黒沢って名前…。」

「拾われた時に私の首に付いてたネックレスに『黒沢 千鶴』って書いてあっただけよ。それが母親の名前なのか私の名前なのかがわからないまま、私の名前として登録されたってだけなの。」


サバサバと話す千鶴さんを尊敬する。


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