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籠の中の天使
第17章 スタートライン



櫛で私の髪を梳かしながら千鶴さんが髪をじっと見る。


「結構、伸ばしてるけど…、長いのが好きなの?」


千鶴さんの質問に少し考え込む。

長い髪が好きだったのは南斗だ。

南斗の為に伸ばした髪は背中の真ん中を超えてしまった。


「切っても…、問題は無いです。」


南斗を断ち切るように髪を切ろうと決断する。


「そうね、咲都子の髪は真っ直ぐで綺麗だけど、ここまで長いと重すぎて髪に動きがなくなってるわ。」


私の決断を理解した千鶴さんは長い髪が邪魔だと言わんばかりに勢い良くハサミを入れて来る。

風に軽やかに靡く動きがある髪に憧れていた。

南斗の好みを振り払い、私は憧れの姿へと変わってく。

カットが終わればメイク…。


「これは咲都子にも覚えて貰うわよ。」


お母さんのような仕草で千鶴さんが丁寧に手取り足取りと私に似合うメイクを教えてくれる。

眉の描き方…。

ルージュの引き方…。

ミルクティーベージュな色になった髪に合うメイクカラーも千鶴さんが一つ一つ説明する。


「今回はあまり抜かずに重めのミルクティーにしてあるの。だからカラーはピンク系かゴールド系が有効だけど肌の白さに呑まれるホワイトカラーは顔がボヤけちゃうから使わないように…。」


必死に千鶴さんの教えを覚えようとする。

学校で学んだ事以上に大切な事だと感じる。

私が変わる為に必要な知識…。

市原さんの気持ちに応える為の知識…。

一つ一つを大切にしながら千鶴さんと前に進む。

最後が爪の手入れなど…。

全てが終わり、千鶴さんがドライヤーを使って私の髪の仕上げをしてくれる。


「こんな感じかな…。」


満足気に笑う千鶴さんが私のケープを外し、全身をガン見する。


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