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籠の中の天使
第17章 スタートライン
「美味し…。」
喉がカラカラだった私の口の中で冷えたアップルタイザーがシュワシュワと染み渡る。
テーブルにはレモンを添えた生牡蠣やビスクと呼ばれるロブスターのスープが並び、バスケットに入ったフランスパンに牡蠣を乗せたり、ビスクを付けて食べたりするだけで自分がしっかりとお腹が空いてたのだと思い知らされる。
そしてノアが頼んだトマホーク…。
「何…これ!?」
目を丸くした私をノアが笑う。
「要は骨付きステーキ…、斧みたいな形をしてるからトマホークと呼ばれる。」
アメリカじゃ、こんな食生活が当たり前だったとノアが言う。
「見た目は凄いボリュームなのに、お肉が柔らかい…。」
分厚いお肉は赤みを残す焼き加減でローストビーフの塊を贅沢に食べてる気分になる。
お肉だけだと重いと感じるなら付け合せのマッシュルームやオニオンフライと一緒に食べれば更に格別な味がする。
絶対に食べきれないと思ってた量のお肉が私とノアの胃袋へ次々と消えていく。
ノアの食欲の凄さに引っ張られるようにして食事が進む。
「もう…、ダメ…。」
短い人生の中で一番食べた日だと思う。
「デザートはどうする?」
ニヤリと笑うノアの言葉に慌てて首を振る。
「絶対に入らない。」
「入るだろ?デザートだけは別腹とかよく言うじゃん。」
「今日は無理…。」
「まあ、咲都子にしてはよく食べたから許してやるよ。」
本気で私を太らせようとするノアが笑ってる。
なんで…。
この人は…。
こんなに…。
そう思うだけで涙が出そうな気がする。
まだ1日しか過ごしていないノアなのに、私の10年分くらいの経験をあっさりと与えてくれる。