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籠の中の天使
第17章 スタートライン



全てにおいて惜しげなく私に与える人…。

私は甘えてるだけの私で良いと簡単に言えちゃう人…。

今まで生きる為に頑張ろうと必死にもがき苦しんで来た。

そんな必要はないのだと言い切るノアの前では素直に笑えて全身の力が抜けて来る。

そして…。


「ありがとう…、ノアに出会えて良かった。本当にノアが居てくれて嬉しいと思う。」


偽りも何も無い、そのままの自分の気持ちがノアには言える。

ノアにはどれだけ感謝しても感謝しきれないと思う。

なのに…。


「礼を言うにはまだ早い。」


余裕の笑みを浮かべてノアが言う。


「でも…。」

「言ったろ?俺も咲都子も自分がやりたい未来を探してる最中だ。咲都子はやっと、そのスタートラインに立っただけで、まだ1ヤードも進んでない。」


テーブルに置いてた私の手をノアが取る。

その手の平をペロリと舐めたノアが私を立たせる。


「帰るぞ…。」


私とノアの家へ…。

私が未来を見つけるまでノアは私と居てくれる。

その安心感に帰りの車では欠伸が出る。


「帰ったら先に風呂に入ってさっさと寝ろ。」


クスクスと笑うノアが好き…。

お腹にまで響くノアの声が気持ちいい…。

私の未来探しは始まったばかりだ。

ノアが居る未来探しは全く不安を感じさせずにノアに甘えるだけの私はしっかりと眠れる体質になってた。

ノアとの生活にはルーティーンがある。

夜が早いノアは朝の5時には起きる。

ベッドから出るノアのシャツを掴む。


「咲都子も起きた?今日は何日かわかるか?」


毎朝、必ず私に聞く。


「23日…。火曜日…。」

「よく出来ました。」


そう言うノアが唇を私の額にそっと押し付ける。


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