この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第3章 学校嫌い
最近の私は南斗の傍に居たくて、南斗の気持ちを知りたいとか思うようになる。
だから学校で女子に人気がある南斗の事なんか知りたくもないし、女子に囲まれる南斗は嫌い。
つまらない独占欲が私の心を歪める。
「ほら、着いたぞ。」
僅か30分ほどのドライブは終わり南斗の車はあの街の裏通りで停車する。
「明日は?」
「悪い…、俺は職員会議があるから自分で登校出来るか?」
「わかった。でも夜の約束は絶対だよ。」
「わかってる。おやすみ…。」
まだ夜の8時前なのに南斗は私に早く寝ろと急かすような挨拶をして車から降ろすと、すぐに立ち去る。
裏通りの片隅には木戸が有り、そこを開けば妓楼長屋の裏口がズラリと並んでる。
表通りからは『お兄さーん…。』と男の人を呼び止める声や私の嫌いな音楽が風に乗って聞こえて来る。
木戸を潜り、自宅の玄関となる裏口へと急ぐ。
私の家の裏口は木戸から三つ目の扉…。
古びたステンレスの扉が何個も並ぶ中にある一つのノブを掴めば
「あら、『夢乃家(ゆめのや)』の咲都子ちゃん?久しぶりやね。最近は帰って来てるの?」
と声がする。
うちのお隣の『錦(にしき)』の女将で私や南斗は『錦』のママって呼んでたおばあちゃんが私を見てる。
『夢乃家』や『錦』は各妓楼の屋号…。
南斗のお母さんのお店は『銀河(ぎんが)』…。
ママさんや女将さんだらけの、この街じゃ区別をする為に屋号で呼ぶのが普通の事…。
わかってても私までもが屋号で呼ばれるのは嫌だと思う。
『錦』のママはこの街じゃ古くてかなりご年配の方だから、失礼だとは思うけどママの質問には答えず無視したまま家の扉を開く。
「ちょっと、咲都子ちゃん、ご飯がまだならおばあちゃんが何か作ってあげるけど…。」
慌てるおばあちゃんの声を聞きたくないからと遮るように扉の中へと滑り込み扉を閉める。