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籠の中の天使
第19章 羽ばたく瞬間
馬鹿だった…。
ノアが見せてくれる華やかな世界に憧れた。
スポットライトを浴びて誰かの役に立てれば自分も天使になれると勘違いをしていた籠娘の頭の中で天使が笑う声がする。
ゆっくりとノアの唇が離れて私を抱き締める。
耳にはノアの心音が響く。
「人は誰もが等しく神の子として生まれる。」
ゆっくりと神の言葉を語るノアが笑う。
「俺も咲都子も天使だ。迷いがその事実を混乱させている。だから…迷うな。戦え…。咲都子ならちゃんと翔べる。」
「翔べ…ないよ…。」
「翔べるよ。お前は自分の背中にある大きな翼が見えてないだけなんだ。自分の背中を見れる人なんか誰も居ないからな。」
「私に翼なんかないもの…。」
「あるよ…。俺にはお前の翼が見える。穂奈美さんにも見えてる。穂奈美さんはその翼が見えるから咲都子を選んだんだ。」
ノアが私の涙を拭う。
「他のモデルは自分の意志でオーディションを受けて、ここに来たような人ばかりだ。撮影には慣れてて当たり前の人だ。でも、咲都子は違う。お前はこの世界の神に選ばれた天使だ。穂奈美さんを信じてここに来たんだろ?」
神を信じる事は自分を信じる事だとノアが教えてくれる。
歪んでいた世界が少しづつ見えて来る。
ノアの額が祈るように私の額に当たる。
「自分は翔べると信じろ。咲都子は誰よりも穂奈美さんの服を上手に着てるから…。」
暖かい笑顔に涙が止まる。
もう一度、自分の立場を考える。
私は何の為にここに来たのか?
ここを逃げ出す事はノアからも逃げる事になる。
南斗から逃げた時の自分と何も変わってない自分を恥じる。
「私も…皆んなのように翔びたい…。」
私に翼があるかはわからない。