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籠の中の天使
第19章 羽ばたく瞬間



ノアはニヤニヤと変な笑みを浮かべて私を見る。


「読モ…やりたかったか?」


ノアに聞かれて答えに迷う。

身体が熱くなるほどの興奮を味わった。

あれが穂奈美さんの居る世界だと思うだけでゾクゾクとして妙な興奮と快感が湧いて来る。

あれは甘美とまで言えるほどの僅かな快楽の時間だった。

見えない力を感じて、見えない誰かの視線に晒され、見えない何かの甘い愛撫に溺れる様な感覚がまだ私の中に残ってる。

神に愛されてる自分を感じる一瞬を、もう一度感じてみたいという欲求に身体が疼く。

だけど私がノアの保護無く、あの世界に留まる事は出来ない。


「もしも...願いが叶うのなら穂奈美さんの様になりたい。でも...どうすればいいのかわからない。」


私の望みを叶えてくれる神に祈るように呟く。


「あの世界は…、派手に見えても現実は地味だぞ。」


私の頭をクシャクシャと撫でてノアが嫌そうな顔をする。


「ノアは…私がモデルをする事に反対なの?」

「いや…、咲都子がやりたいと思うのなら反対はしない。けど、その前に今日のギャラを見てみろ。」


言われた通りに穂奈美さんから受け取った封筒を開けてみる。

中には皺一つない千円札が4枚だけ入ってる。


「安っ!売れっ子じゃない新人モデルとはいえ、その値段は安過ぎんだろ。」


交通費込みでのこの値段にノアは嘆くけど、私は初めて自分の力で手に入れた自分のお金に興奮する。


「そろそろ、行こうか。」


スタジオを片付け終わった穂奈美さんが私とノアに声を掛ける。


「あのっ!穂奈美さんっ!」


帰ろうとする穂奈美さんを呼び止める。

私の神...。

憧れの人...。

憧れだけで終わらせたくないと心が叫ぶ。


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