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籠の中の天使
第20章 愛の差
穂奈美さん達の世界では学校で教わる事など殆ど役には立たず、自分自身の才能だけが頼りの世界なのだと言われる。
「私では無理だと思いますか?」
自分の才能なんかわからない。
ただ少しでも穂奈美さんの役に立ちたいとばかり考える。
「無理だとは思わない。でもね...。」
穂奈美さんが息を吸う。
空気が緊張を帯びて張り詰める。
「私のレベルになれないと思うのなら、始めから止めておきなさいと言わざるを得ないのよ。」
悲しげな瞳を穂奈美さんが見せる。
千鶴さんまでもが辛そうに私を見る。
「でも...、私じゃ穂奈美さんのようには...。」
「私のようになろうとしてもダメな世界なのよ。咲都子ちゃんは咲都子ちゃんの才能で新しい世界を創り出さなければならないの。私なんか超えてやるのだという強い意志が大切な世界だって事よ。」
そんな言葉で穂奈美さんに突き放されて、目の前が真っ暗になりそうな気分になる。
私がなりたい未来がやっと見えたと思ったのに、私の考えが甘いと穂奈美さんが叱る。
「少し、私の昔話をしようか...。」
泣きそうになった私を気遣う穂奈美さんが語ってくれる。
「私が住んでた街ってお洒落なんか必要が無いとんでもないド田舎だったのよ。しかも、うちは11人兄弟で私は4女...。服は兄や姉のお古が当たり前で私は学校の勉強も満足に出来ない子だったわ。」
穂奈美さんが懐かしげに目を閉じる。
お洒落がしたくとも出来ない状況だとわかってても、修学旅行で着る新しい服が欲しいと穂奈美さんは親に強請る。
その事で兄弟喧嘩になり、不満が爆発した穂奈美さんは家出という強行手段に出た。
「自分でも呆れるくらい馬鹿だったと思うわ。」
クスクスと笑う穂奈美さんの言葉の意味がわからない。