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籠の中の天使
第20章 愛の差



大都会への憧れ...。

何も考えずに東京へ出た。


「家出したばかりだというのに、いきなりモデル事務所の人間だと名乗る人にスカウトを受けたのよ。」


この話は有名だ。


「それからは売れっ子モデルだったんですよね?」


目を輝かせて聞く私に穂奈美さんは首を横に振る。


「違うわ。私をスカウトした人はアダルトを扱う人だった。それも闇で売買されるビデオの制作会社ってやつよ。」


一歩間違えれば、今の穂奈美さんは存在せず、家出少女として身体を切り売りさせられる状況だったと言う。


「たまたま通りがかった沙来姉さんが助けてくれたの。私の頬を思いっきり引張叩いてくれてね。」


苦い思い出に穂奈美さんが自分の頬を撫でる。

沙来さんが居たからこそ、今の穂奈美さんが存在する。


『先ずは家に帰って保護者の許可を貰って来なさい。ちゃんと許可が貰えたその時は私が本物のモデルを扱えるプロダクションを紹介してあげるわ。』


沙来さんの言葉に目が覚めた穂奈美さんは真面目に両親を説得してから東京へ来たらしい。


「後は咲都子ちゃんの知っての通りよ。」


穂奈美さんがずっと黙ったままのノアを見て笑う。


「プロダクションって...。」

「俺の親父の会社...。沙来姉の目に間違いがないから...。」


ノアが所属してると言っていた事務所に穂奈美さんが居たという事実を聞いて驚きが隠せない。


「子役時代から所属をしていた玲夜君の方が事務所では私の先輩になるのよ。」


穂奈美さんの説明にノアが照れた顔をする。


「子役時代とか言っても小学校に入る前の事だからな。どんな仕事をしたとか全然覚えてねえよ。」


この話はしたくないとノアがそっぽを向く。

問題は...。


「もしも、モデルとして活動を始めるなら、咲都子ちゃんはまだ未成年だから必ず保護者の許可が必要になるわ。」


今日の撮影はアルバイトレベルだから、さほど問題にはならない。

だけど、この先も仕事を続けるつもりならば両親の許可が必要になると穂奈美さんが言う。


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