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籠の中の天使
第20章 愛の差



「専門学校へ行くとしてもご両親の許可は絶対に必要になる。」


ノアも穂奈美さんと同じ意見だ。


「私に帰れって意味?」


ここまで私が憧れた世界を見せたくせに、今更、あの街へ帰れと言うノアの言葉が信じられないと思う。


「帰れとは言わない。...けど、今のままという訳にもいかなくなると言ってんだよ。」


寂しく笑うノアに悲しくなる。


「そろそろ、行くわ。ご馳走様...。」


食事を終えた千鶴さんと穂奈美さんが席を立つ。

幾ら、凄い人達でも私をあの街から連れ出す事は不可能だという現実を突き付けられた私だけが動けない。


「帰って...、少し真面目に話合おう。」


動けなくなった私をノアが連れ出してくれる。

ノアの家に戻り、ノアはいつものようにソファーに座ると小さな私を抱き上げて自分の膝に座らせる。


「咲都子は本気で穂奈美さんの世界で生きていきたいか?」


私の頬を指先で撫でながら確認する。


「甘いかもしれない。私に才能なんかないかもしれない。でも、生まれて初めて人の役に立ちたいと思えた世界なの。穂奈美さんの為に翔びたいと思ったの。」


ちっぽけな私に何が出来るかはわからない。

わからなくとも籠娘としてではなく、天使として羽ばたける世界で生きていきたいと思う。

ノアなら、その願いを叶えてくれると信じてた。

だから必死にノアに縋ってしまう。


「だったら...。」


ノアが息を吸う。

こんなにピリピリとしてるノアの態度は初めての事だから、警戒する身体がビクリとして一回り小さくなる。


「俺と結婚するか?」


ため息を吐くようにノアが言う。

心臓が止まった様な気がする。

いや、心臓が壊れるほどの痛みを放っている。


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