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籠の中の天使
第20章 愛の差
結婚?
何の冗談だろうと思う。
デートの時に『魔法を掛けてやる。』と言った言葉と同じ感覚でノアが言う結婚の言葉を受け止める。
「ノアと結婚すれば、穂奈美さんのようになれるの?」
私の馬鹿な問いにノアが笑う。
「俺と結婚すれば、全てを咲都子に与えてやれる。咲都子の両親の許可も要らなくなる。このマンションも車も国松の遺産も全部が咲都子のものだ。」
それは私の為だと言いながら、ノアが自分の世界から逃げる為に私に押し付けてるようにも聞こえる。
「ノアはそれでいいの?」
「俺はその方がいいんだよ。全てを咲都子に与えてしまえば俺は全ての事から自由になれる。だが、それは咲都子を再び地獄に縛り付ける事にもなる。」
「私を地獄に?」
「俺には一つだけ咲都子に与えてやれないものがあるからな。」
ノアが私の胸に顔を埋める。
その瞳は切なく光り、ノアの苦しみを私に伝える。
わかってた。
それを認めてしまうのが怖かった。
全てを与えてくれるノアが、どうしても私に与えられないもの...。
愛だ。
私はノアに惹かれてる。
南斗を忘れるほど、どんどんノアへの気持ちが大きくなる。
私の気持ちに逆らうようにノアは私への想いが失われる。
ノアが救いたいと願ったのは『可哀想な籠娘』だから...。
天使として羽ばたけると確信した私はもうノアの救いを必要としない普通の女の子になった。
そんな私がノアの傍に居ても、南斗を苦しめた時のようにノアを苦しめるだけになる。
それは地獄...。
愛の無い結婚はその事を意味してる。
「ノアは私を愛せない?」
往生際が悪い女が駄々を捏ねる。