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籠の中の天使
第20章 愛の差
少し呆れた顔をしたノアがふっと笑う。
「咲都子は可愛いと思う。咲都子を抱いて俺のものにしたいと思った時もあった。でも、無理だと感じる。爺様のように世界中を敵にしてまで咲都子を愛せる自信がない。」
それがノアの答えだ。
強くて逞しく、後ろを振り向く事をしない男が出した答えを変えれるほどの力は私にはない。
「私は...、どうすればいい?」
この後に及んでまだノアの助けを求めちゃう。
自分が最低だとわかってる。
だけど、ちっぽけな私には何も出来ない。
保護者の力が必要なのに、あの街へは帰れない。
「南斗さんが心配してる。後の事は南斗さんに任せてある。」
ノアの言葉に全身が凍りつく。
「南斗...、なんで...ノアが?」
「『たこ八』のおばちゃんから咲都子の話を全部聞いたと一番始めに教えたろ?俺が咲都子を預かる事は南斗さんの兄の持田先生からも許可を得てる。」
「なら、全て知ってて...。」
「そう、咲都子の好きな飯も、好きな服も、穂奈美さんのファンだって事も南斗さんから聞いてる。その上で俺は咲都子が望む俺を演じただけだ。」
演じてた。
私が惹かれたノアは幻だったとノアが言う。
「すげーよ。南斗さん...。俺が本気で咲都子を愛して、それを咲都子が受け入れるなら南斗さんは何も言わないという約束だった。その代わりに...。」
ノアがわざとらしく怯えた顔をする。
『軽い気持ちで僅かでも咲都子を傷付けたら俺が君を殺す。』
南斗はそう言ってノアを脅した。
「俺には出来ない愛だと思う。他の男に譲ってでも愛し続けるとか俺には絶対に無理だ。」
いつものようにノアが穏やかな笑顔に変わる。