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籠の中の天使
第20章 愛の差
その笑顔は南斗と重なり、ノアが演じた男は南斗の愛だと知る。
「咲都子が苦しい時はいつでも助けてやるよ。だけど俺は南斗さんのようには咲都子を愛せない。今の咲都子なら、それがどういう意味かちゃんとわかるだろ?」
私の頭をクシャクシャと撫でたノアが私を膝から下ろす。
ノアが見せてくれた夢の時間は終わりを告げる。
「また...、ノアに会える?」
「いつでも好きな時にな。」
そう答えるノアが私の手に携帯を握らせる。
それは私が飛び出した時に置いて来た携帯だ。
もう、峯岸君も杉山さんも上地さんも登録が消えた携帯...。
向井さんだけが何故か
『学校にはもう来ないの?』
とメッセージを残したままになっている。
「俺や千鶴さん、穂奈美さんの連絡先を登録してある。咲都子はもう独りじゃない。」
今まで通りにノアは私を助けてくれると約束をしてくれる。
もう泣かないと決めたのに、涙が溢れるからノアの顔がまともに見れなくなる。
「泣くな。俺が南斗さんに殺される。」
そんな冗談を言いノアが私を家から連れ出す。
「送ってやるよ。お前の家か?それとも南斗さんのマンションか?」
初めて会った日と同じようにノアは私を送ってくれる。
「南斗の部屋...。」
私が本当に帰る場所はそこだとノアも私もわかってる。
泣きながら歩く私の手を引いてノアは真っ直ぐに歩き続ける。
振られちゃった...。
私は幻の男に恋をした。
南斗を愛してると思うのは勘違いだと言った南斗の言葉が今になってわかって来た。
南斗の愛と私が思っていた愛は大人と子供くらいの差があった。
それがわかった今は南斗と会うのが恥ずかしい。